くじらのコラム
お弓とセミ(その四)
更新日:2017/05/01
太地の飛鳥神社では、毎年1月13日にお弓神事が執り行われます。
的は木々の聞に渡した綱によって、大人の背丈よりも高い位置に吊り下げられています。的には三つの木彫りの「せみ」が取り付けられていました。那智や浦神の的と違って、的の中央や裏に「鬼」という文字は書かれていません。また神職が弓を的に向けて射るとともありません。神職が山に向けて矢を放っと同時に的を吊るしていた綱が緩められ、的が地面に落ちます。同時に、的から少し離れて横一列に並ぶ数名の男性を留めていた綱が緩められます。男たちは、的に取り付けられた「せみ」を取ろうとして、地面に落ちた的の上に折り重なって争います。
今年は四名の男たちによる取っ組み合いでした。かつては大勢の男たちが参加したといいまずから、さぞかし迫力のある祭りだったことでしょう。血気盛んな男たちが的から「せみ」を取った後は、さらに数名の男性たちが加わって、的と、的の下の地面に突き立てられていた松の木の枝が引きちぎられていきました。的の小片に松の小枝を添えて玄関あたりにお供えすると揺がもたらされるというととでした。
那智や浦神でも少し前までは的は引きちぎられていたということでしたが、的を毎年新調するのは、今や飛鳥神社のお弓神事だけになったようです。